2025.06.02技術情報
PLCの代わりにマイコンで制御基板を作りたい。考慮点は?
産業用機器や自動化装置の制御において、PLC(プログラマブルロジックコントローラ)は
長年にわたり主流でしたが、近年ではコストや柔軟性を重視して、
マイコン(マイクロコントローラ)を使った制御基板の自作や受託開発を検討するケースも
増えています。
この記事では、PLCの代替としてマイコンを使う際に考慮すべきポイントを技術者向けにまとめます。
目次 |
1. システム要件の明確化 2. 安定性と信頼性 3. 保守性と拡張性 4. 開発期間とリソース 5. コスト比較 6. 認証・安全規格への対応 7. まとめ |
1. システム要件の明確化
項目 | 内容 |
● 制御内容の複雑さ | タイミング制御、通信、アナログ制御、割り込み処理の有無を確認。 |
● 応答速度 | リアルタイム性が必要か、どれほどの応答時間が許容されるか。 |
● 入出力点数 | デジタル入出力(I/O)の数、アナログI/Oの必要性を明確にする。 |
2. 安定性と信頼性
項目 | 内容 |
● ハードウェアの信頼性 | ノイズ耐性、ESD対策、電源安定化回路の設計。 |
● ソフトウェアの堅牢性 | 例外処理やウォッチドッグタイマの活用、フリーズ対策。 |
● 動作環境 | 温度・湿度・振動・ノイズといった環境条件に耐えうる設計か。 |

3. 保守性と拡張性
項目 | 内容 |
● 将来的な機能追加への対応 | ファームウェア更新や拡張端子の有無。 |
● 故障時の保守方法 | 交換性・診断機能の有無、ログ出力の実装。 |
4. 開発期間とリソース
項目 | 内容 |
● 開発体制 | ハードウェアとファームウェア両方の開発スキルが必要。 |
● 開発期間の確保 | PLCに比べて開発・デバッグ期間が長くなる傾向。 |
● ツールと環境 | 開発環境(IDE、デバッガ、ライブラリ)の整備と選定。 |
5. コスト比較
項目 | 内容 |
● 初期開発コスト | PLCは初期導入が容易だが、マイコンは開発工数がかかる。 |
● 量産時コスト | 少量ではPLCが有利だが、大量生産ではマイコンが安価になる 可能性がある。 |
6. 認証・安全規格への対応
項目 | 内容 |
● 安全性の確保 | 万が一の暴走・誤動作に備えた安全回路の設計。 |
● 各種規格対応 | EMC、機械指令、安全規格などの取得が必要な場合がある。 |
7. まとめ
マイコンで制御基板を構築することで、柔軟でコストパフォーマンスに優れたシステムを
実現できますが、その分開発の自由度が高く、慎重な設計と十分な検証が必要です。
設計初期から目的を明確にし、必要な機能・信頼性・拡張性を意識して開発に臨むことが
成功のカギです。
この記事を企画・執筆した人

スター電子株式会社
この記事は、スター電子株式会社が企画・執筆しています。当社の受託開発・受託製造・自社製品などの実績やお知らせ・関連コラムをご紹介しています。