2025.10.27技術情報
射出成形機の制御技術(温度・圧力・サーボ制御など)
射出成形機は、樹脂を加熱・溶融し、金型に射出して冷却・固化させることで製品を成形します。この一連の工程を安定して再現するためには、温度・圧力・速度・位置といった要素を高精度に制御する必要があります。ここでは、射出成形機における主要な制御技術について解説します。
| 目次 | 
| 1. 温度制御 2. 圧力制御 3. サーボ制御 4. 最新の制御技術動向 5. まとめ | 
1. 温度制御
(1) シリンダ温度制御
射出スクリュー内のシリンダは、複数のヒーターゾーンで構成されており、各ゾーンごとに樹脂の溶融状態を最適化します。温度が高すぎると樹脂の分解や糸引きが発生し、低すぎると射出抵抗が増加します。
● 制御方式:PID制御が一般的。
● ポイント:ゾーンごとに個別制御を行い、材料ごとの最適温度プロファイルを維持。
(2) 金型温度制御
金型内の冷却水路を通じて温度を一定に保ち、成形品の寸法精度・外観品質を安定させます。温度ムラがあるとヒケや反りの原因になります。
● 制御方式:温調機によるフィードバック制御。
● ポイント:金型の位置や流路バランスを考慮した均一化設計が重要。

2. 圧力制御
射出成形の品質を左右する最も重要なパラメータの一つが「圧力」です。射出圧力と保圧の制御により、製品の密度や外観が決定されます。
(1) 射出圧力制御
スクリュー前進時の圧力をリアルタイムに制御し、樹脂を金型キャビティに充填します。
● 圧力が不足するとショートショット(充填不足)が発生。
● 圧力過多ではバリ(フラッシュ)や金型損傷の恐れ。
(2) 保圧制御
金型内での樹脂収縮を補償するための圧力を一定時間保持。
保圧が適切でないとヒケや寸法不良が発生します。
● 制御方式:時間・圧力・スクリュー位置による段階制御。
● ポイント:材料粘度や製品肉厚に応じて最適化。
3. サーボ制御
近年の射出成形機では、油圧制御に代わりサーボモータによる電動制御が主流になりつつあります。サーボ制御は、位置・速度・トルクを高精度に制御できるのが特徴です。
(1) サーボ射出制御
● スクリューの回転数と前進速度をモータで直接制御。
● 射出の立ち上がり応答性が高く、ショートやフラッシュの抑制に効果的。
(2) サーボ型締制御
● クランプ動作をサーボモータで制御し、金型保護やエネルギー効率の最適化を実現。
● 金型接触時の圧力を検知し、摩耗や破損を防止。
(3) サーボポンプ制御(油圧機のハイブリッド型)
● 油圧システムにサーボモータを組み合わせ、必要なときだけポンプを駆動。
● 消費電力を大幅に削減できる省エネ構成。
4. 最新の制御技術動向
| AIフィードバック制御 | センサー情報を解析し、充填状態や粘度変動を自動補正。 | 
| モールド内圧センサー制御 | キャビティ内圧を直接フィードバックし、最適保圧タイミングを決定。 | 
| デジタルツイン化 | 成形条件と結果をデジタルモデルで再現し、条件最適化を自動化。 | 
6. まとめ
射出成形機の性能は、温度・圧力・サーボ制御の精度によって大きく左右されます。近年では、従来の油圧制御に代わり、電動サーボ制御やAI補正技術の導入が進み、より安定した品質と省エネルギー化が実現されています。
開発・運用の段階で、これらの制御要素を最適化することが、高品質な成形とコスト効率の両立につながります。
この記事を企画・執筆した人

スター電子株式会社
この記事は、スター電子株式会社が企画・執筆しています。当社の受託開発・受託製造・自社製品などの実績やお知らせ・関連コラムをご紹介しています。














