2025.11.04技術情報
射出成形機のトン数とは? クランプ力の基礎と選定の考え方
射出成形機における「トン数(ton)」とは、『型締力(クランプ力)』を表す単位です。型締力とは、射出成形時に金型をしっかりと閉じて、溶融樹脂が型の合わせ面(パーティングライン)から漏れ出すのを防ぐための力のことです。射出成形機を選定する際に非常に重要な指標となります。
| 目次 |
| 1. トン数(型締力)の役割 2. 必要なトン数の計算方法 3. トン数別の代表的な用途 4. トン数選定のポイント 5. まとめ |
1. トン数(型締力)の役割
成形工程では、スクリューから射出された樹脂が高圧で金型内に充填されます。
このとき、金型が十分に締め付けられていないと、樹脂圧力によって金型が開き、『バリ(フラッシュ)』が発生します。そこで、トン数=型締力はこの樹脂圧に打ち勝つために必要となります。
型締力の単位は『kN(キロニュートン)またはtonf(トンフォース)』で表され、一般的には1ton ≒ 9.8kNです。
2. 必要なトン数の計算方法
必要な型締力(F)は、以下の式で概算できます:

● P:樹脂の射出圧力(MPa)
● A:投影面積(cm²)※製品とランナーの型開き方向への投影面積
● S:安全係数(1.1〜1.5)
例: 製品の投影面積が200cm²、射出圧力が40MPaの場合、

したがって、100トン級の成形機が適していると判断できます。

3. トン数別の代表的な用途
| トン数範囲 | 主な用途 | 代表製品例 |
| 20~100トン | 精密部品、小型コネクタ | 電子部品、医療部品 |
| 100~300トン | 一般部品、日用品 | 家電部品、容器、ギア部品 |
| 300~800トン | 大型構造部品 | 自動車内装部品、筐体 |
| 800トン以上 | 大型外装・工業部品 | バンパー、産業機械カバー |
4. トン数選定のポイント
(1) 投影面積と射出圧のバランス
成形品の面積が大きい場合や、射出圧力が高い樹脂を使用する場合は、高トン数の機械が必要です。
(2) 金型構造とキャビティ数
キャビティ数が多い金型では、全体の投影面積が増加するため、型締力も増加します。
(3) 樹脂の特性
ガラス繊維入り樹脂など、高粘度・高圧充填が必要な材料ではより大きなトン数を要します。
(4) 成形機サイズの最適化
過剰なトン数の機械を選ぶと、エネルギー消費が増大し、ランニングコストが高くなります。必要最小限の型締力を確保するのが理想です。
5. まとめ
射出成形機の「トン数」は、成形品質とコストのバランスを左右する重要な要素です。
製品の投影面積・樹脂特性・金型構造をもとに、適正な型締力を持つ機械を選定することが、不良防止と安定した量産に直結します。
適切なトン数を理解し、無理のない成形条件を設定することが、高品質な製品づくりの第一歩です。
(※今回の記事は弊社お客様にご指導いただき、記事を作成しました。)
この記事を企画・執筆した人

スター電子株式会社
この記事は、スター電子株式会社が企画・執筆しています。当社の受託開発・受託製造・自社製品などの実績やお知らせ・関連コラムをご紹介しています。











